見えない眼が映すもの、記憶のかけら

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贅沢な寂しさ (短編小説)


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恭介が、今まで、登山どころか、軽いハイキングをもした事も無い、山に入った経験が全くない、ましてや、今回の旅で体調をわるくして、谷川岳に登れるほどの体力が快復してはいなかった事さえも考え付かないほど、私は恋に溺れた愚かな女になっていたのだった。

むしろ、私が支えてあげれば、恭介は男性なのだし登山の苦しさくらいには耐えられると簡単に考えていた、あの時の私自身が登山者として過信しすぎていたのだろう。
恭介は一晩ゆっくりと休んだのだから、もう、睡眠不足による、体調不良も快復しているだろうと、軽く考えてしまっていた。

夏の登山シーズンとしては少し早い6月のはじめの今、谷川岳は新緑が美しい季節だ、まだ夜も明けきらぬ早朝の5時前に恭介の体調を少しだけ気なりながらも、私の気持ちは逸っていた。

何事においても恭介と知り合って、恋人同士になってからも、どうしても私は自分でも気づかないうちに気後れしている部分が多かった気がしていた。
今の時代であったならば、身分が違いすぎるなどと言う事の偏見を持つ必要も無いのだけれど、あの頃は、恭介と私では学歴も家柄も違いすぎた、したがって、恭介と私の知識の違いも多い気がして、たとえ、知っている事でさえ、口ごもったり、物事を知らぬふりをして、ぎこちないそぶりが可笑しくもあったけれど、恭介の素敵さが、私を不安な気持ちにする時も多くあった。

けれど、私には、登山、山の事だけは唯一、恭介に堂々と話せる事であって、自信のもてる事でもあった。
恭介がなぜか、谷川岳に登ろうと言った時、恭介の心のうちを知らずに、私はとても嬉しかった。

私の大好きな山である谷川岳を、職場の先輩に連れられて登山した時など、その時の楽しさや登山の苦しみも、たとえようない喜びや幸福感に変わる瞬間がある事を、私は得意げによく恭介に話していた、その事を恭介が覚えていてくれた事が私はただ嬉しかった。
昨日から宿泊していた、土合山の家を私はふたりの荷物を手早くまとめて、恭介が背負うリックには軽い物をまとめて、私が背負うリックには食料や水など重いものをまとめて背負い、車道を歩き、昨日、恭介が苦しみながら階段を登った、土合駅を右に見ながら、西黒尾根の登山口を目指して、ゆっくりと恭介の様子を見ながらふたりは歩いた。

今日もやはり歩き始めてすぐに、恭介は苦しそうな息づかいに耐えて、無言で歩いている事が気になりながらも、どうしても谷川岳に登ってみたいと言う恭介を励ましながら歩いた。

西黒尾根の登山口へ向かう少し手前にある登山センターはいつ来ても背中をこそ寒い感覚になる不思議で緊張させられる不安な気分になる場所だ!

なぜか、別世界の存在を感じるような感覚になる、だがそれは決して怖いとか恐怖を感じる事ではなく、眼に見えない存在とでも言おうか、大げさに言えば、何かこの眼に見えない存在を意識させられる場所だ!

とにかく、湿気と生温かい空気がよどむ、そんな不思議な感覚の中で、私は恭介とふたりで、これから登る谷川岳のコースを記入した登山届けを出して、西黒尾根の登山口に向かった。

少し急な登りを恭介は喘ぎ苦しみながら、時々深いガスが行く手を阻むように、すべての風景を覆い隠して、うす闇の中でふたりは緊張と足場の不安定な岩場と格闘してもがきながら、突然闇はひらけて、雲間から射す、光の帯はまるで、クリスタルの氷柱のように煌き、まばゆく眼の中を焼き尽くすように走る、一瞬の光線が体を突き抜けて行く、冷えた体を暖めてくれる光だ、そんな中でふたりは必死で歩いていた。

そんな恭介の姿を見ていて私はむしろ頼もしく思えて、いい知れぬ喜びと幸福感さえも恭介に感じて嬉しかった、これでやっと恭介と私は同じ立場に慣れたような気がしていた。

いくつもの難所を無事通過して、何度も深い霧に包まれ、手探りの登山を強いられて、恭介と私は苦しさの中を喘ぎながらケイセツ小屋跡をいつの間にか通り過ぎていた。
ごくまれに突然深い霧が晴れて太陽の光がふたりだけに射してまるでスポットライトのように、薄い色の虹をを見た時、なぜか私は苦しいほど切ない思いになり涙が流れてとまらずに何度も手でぬぐいながら歩いた。

ふと、雲の切れ間から見えた、マチガ沢の風景は恐ろしいほどの迫力で私に迫って来るようで思わず私は緊張して体が硬直する!

最後の岩場を恭介はよろけるように、危なげな足取りで、岩場をよじ登りながら、なぜか、恭介も涙を流しているようにみえた姿に、私はわけの分からない不安を感じて、鼓動が苦しくなるような気持ちが乱れて落ちつけない!

「恭介さん、少し先に、避難小屋があるけど、休んで行く?」
「少し、風が強いから、風を避けて、小屋で休んだほうがいいわ~」
「体を休めようよ!」
「朝から、何も食べていないから、少し何か、小屋で食べましょうよ!」
「何か、食べたほうが、体も温かくなると思うの!」

そう言って、恭介に何とか休んでほしいと思うけれど、恭介は、どうしても、谷川岳の頂上に早く行きたいと言って、私の話を聞こうとしない。

「恭介さん!」
「そんなに、急がなくても、大丈夫よ!」
「下山は天神平まで下りて、ロープウェイに乗って行けば良いし」
「下山はもっと楽に歩けるから・・・」
「足は辛いかもしれないけど、胸は苦しくないからね!」
「ゆっくり歩いても、夕方までには下りれるから・・・」
「少し、休みましょうよ!」
「とにかく、何か食べて、体力をつけなくては、ダメよ!」

恭介を少しでも休ませてあげたい、体を楽にして、疲労をやわらげてあげたいと思い、こんな言葉を並べて、恭介を非難小屋で休ませたかったが、私自身もふと、心の中になぜか不安感があった。

確かに、今は谷川岳の頂上がはっきりと見えるつかの間晴天だが、いつ、天候が変わるか分からないこの谷川岳!
この山は天候の変化をいち早くよみとる事が難しい山だと、私の頭の片すみをよぎった。
そう、思いながらも、雲一つ無い、深い青い空が谷川岳を太陽の光が照らしている、あんなに深い霧に覆われていたさっきまでの風景が嘘のように美しい青い空が見えていた。

けれど気温は低い、確かに吹く風が冷たく体を休めると直ぐに冷えて寒くなって来る事を避けなくては・・・

ここからはもう一呼吸で登れる、眼の前が谷川岳頂上トマの耳がはっきりと見えていた。
恭介は休むと歩き出しが辛いからと言いながら、よろけるように、私の前を歩いて行く!

その姿がとても辛そうで、私は手をとり、支えてあげたかったけれど、恭介に触れる事さえ今は許されないような拒絶感を感じて恭介の一歩後ろを歩きながら、恭介がなぜここまで谷川岳を登る事にこだわったのだろうとふと思った。

喘ぎながら、やっと、恭介と私は谷川岳の頂上、トマの耳にたどり付いた!!!
恭介は頂上に着いたと同時に、狭い頂上によろけて、座り込んでしまった!!!
私はリックから雨具の上着を出して恭介にかけてあげながら・・・
「風が冷たいから、風を避けられる場所に移りましょう、恭介さん!」
「恭介さん、お願いだから、私の話を聞いて!」

(5)
私は恭介の腕に触れた瞬間、不思議な感情になり、わけの分からない不安感、表現の出来ない恐怖を感じて、それは、恭介が怖いのではなく、別の存在が恭介のそばにいたのを見た気して緊張した。

あの時の感覚は40年の歳月が過ぎた今も忘れる事が出来ないほど、とても不思議で全身が硬直するような違和感を感じた感覚だった!

そんな嫌な感覚を無理に振り払いながら、私は、恭介の腕をとり、オキの耳ピーク側に向けて、少し背の高い笹が茂る場所に移動して、ふたりは腰をおろして休んだ。

私はとにかく下山までの少しの時間を恭介に何か食べてほしいし、少しでも疲労感を取り下山の歩きを少しでも楽にしてあげたかった。
私のリックから取り出した、土合山の家でもらって来た、つめたく冷えてしまった、水筒のほうじ茶を恭介に手渡し口元に無理に持って行き、一口飲んでもらい、ビスケットを無理に食べさせてほうじ茶で流し込むように食べてもらったが、恭介の胃は食べ物を受け付けないようで、直ぐに、吐き戻してしまった。

そんな中で、ふたりの心を和ませてくれた、思わぬ珍しいお客さん、可愛い姿の「オコジョ」が本当に珍しく私たちの眼の前を一瞬、横切って行く姿を見た!
その姿はあまりにも突然で、可愛い姿で、オコジョは一瞬、私たちに挨拶をするように、ふたり顔をちらりとみつめて、まるで、幻だったように、姿を消してしまった。

恭介は、今回の私との過ごした3日間の中で始めて、やさしい笑顔になった、可愛いい、オコジョの一瞬の姿が、恭介の心を和ませたようで・・・

「もう一度、あいたいな~」
「まるで、天使のような、姿だったね~」

そう、ぽつんとひとこと言って、恭介は、又、元の暗い表情になった。
恭介のその暗い表情の意味を私はまだ理解できずにいた事が、長い歳月が過ぎた今も悔やまれて、心が冷えて硬直するような悲しみが心を曇らせてしまう。

私はあの頃まだ心が幼すぎたのだろう、私の想いだけが強すぎて、恭介の苦しみや苦悩を分かろうとはしなかったのかも知れない!
恭介の暗い表情が私には息苦しいほど気まづく感じて、何も食べられずに水さえも飲もうとしない恭介の姿を見ているのが辛くなって、又、私自身の生理現象を長く我慢していた事もあり・・・

「恭介さん、私、ちょっと、そこまで」
「お花摘みに行ってくるわね!」
「ここで、待っててくださる・・・」

恭介さんは不思議そうな顔をして、お花摘み?って?・・・
「この辺に、お花は、あまり咲いてないよ!」
「でもゆっくり、お花捜して見て来て!」
「僕はここで待ってるから・・・」
「僕はとても疲れたから・・・」
「お花を見つけられないよ!」

そう言いながら、恭介は体を少し横に倒れるように寝転んだ、私は恭介の体を支えるようにリックの上に頭をのせて、つかれた体を休めて元気を取り戻してほしくて・・・

恭介をひとりにしてあげたほうが良いと思いながら、私は恭介のそばを離れた!!!
お花摘みとは、山でのお手洗いの事、生理現象の用をたす事を現す言葉だった!

なにげなく交わした、この会話を最後に、恭介と私は、あまりにも残酷な運命を生きる事になった。
恭介には、この言葉、お花摘みの意味を説明出来るほど、その頃の私は大人の女ではなかったから、生理現象の気恥ずかしさから、ぎこちなく笑い、可笑しな顔を恭介に見せて、急いで、用を足せる場所を捜してまわり、笹薮の高く生い茂った中に隠れて用を足した。

私が恭介のそばを離れた時間はほんの10分ほどの短い時間だったと思うが、そのわずかな時間が恭介と私の一生を運命付ける、果てしなく長い時間になった。
私の不運さを決定づける時間になってしまった!!!

私は生理現象の気恥ずかしさをかんじ取られないように、身だしなみを特に気づかいながら何度も確かめてから恭介のいる場所に戻ったが・・・

なぜか、ついさっきまでふたりがいたその場所、恭介のいるはずの場所には誰もいなくて、私は、恭介も用を足しにその辺に行ったのだろうと、簡単に考えて、自分が背負って来たリックの中身を確かめて、恭介が食べられる物を考えて、あれ、これ、と思いながら、自分は恭介のいない間に恭介に気を使わずに食べられる、あんぱんを大口でほおばりながら食べて、恭介の戻って来るのを待っていた。

10分たち、20分たち、そして30分、1時間過ぎても恭介は私が待っている、ここでふたりが休憩していたこの場所に戻ってはこなかった。
「恭介さ~ん~、恭介さ~ん~」
「どこにいるの~、早く、戻って来て~」
「す~ぐ~に、恭介さ~ん~、返事をして下さい~」
何度も恭介の名を呼びつづけて・・・

のんびりやの私も不安な気持ちがどんどん広がって行き、どうしたらよいのか分からない、混乱した気持ちで、周りを捜し、誰かに助けを求めたくても、不幸にも、谷川岳の頂上付近にいる登山者は誰もいなくて、急いで、山頂から少し下った、肩の小屋避難小屋に急いで駆け込んでも、ここにも人のいる気配さへ無い、誰もいない!!!

私は急ぎ、駆け出して、元の場所に戻った!!!
恭介が戻っているかもしれない!、いや、絶対に恭介は戻って来ているはずだ!

そう思いながら、息が苦しいのをこらえながら、恭介の姿を求めて、ふたりが休んでいたあの場所に急いでかけ戻った!
けれど、無情にも、ふたりがいた場所には誰もいない、恭介は何処へ行ってしまったのだろうか・・・

私は、恭介が私の後を追って、用を足すために行った、オキノ耳方面に少し離れた場所まで行ったので、私の後を追って行ったのかもしれないと、何度も、何度も、恭介を捜して稜線上の足場の悪い登山道を恭介をさがして歩いた。

あとから気づいた事だけれど、なぜか、恭介が背負って来たはずのリックもなくなっていて、益々、私は混乱して、恭介の身を案じながら、不安を大きくして行った。
谷川岳の登山シーズンには少し早い時期でもあった事と、西黒尾根を登って来た歩程時間がかかりすぎて、頂上についた時間が昼をすぎて、3時に近い時間だった事に今頃になって私は気づいた!!!

あまりにも登山者としての思慮不足で未熟だった事から起きた事だったのかもしれないと、混乱する気持ちを落ち着かせようとつとめたけれど・・・

私が我に返って、恭介がただならぬ事態に至ったと悟るまでの時間、私はただうろたえて、ひとりで動き回り、探し回っただけで、どうする事も出来ずに無駄な時間を費やしてしまった事が悔やまれた。

けれど、もう、夜の闇はとっぷりと私に襲いかかり、私をがんじがらめにして、暗闇の中に閉じ込めてしまった。

(6)
ただひたすら、恭介が戻って来てくれる事を願い、祈りながら、ながい、ながい、夜の暗闇の中で、恭介とふたりで休んだ場所に私はひとりで一晩、寒さも感じないほどにただ、恐怖と不安に耐えて過ごした。

もちろん、何度も、肩の非難小屋へは行ってみたが、恭介とふたりで、谷川岳の頂上に立ってから誰にも会ってはいないし、非難小屋にいた登山者も無く、この山にいるのは姿の見えない恭介と私だけなのだと思った時、耐えられぬ寂しさと恐怖で体が硬直するほど恐れ混乱した。

恭介が私を驚かそうとして、きっと何処かに隠れていて、直ぐにでも、私の目の前におどけた顔をして出て来てくれると思いながら、何度も何度も、繰り返し同じような思いを意識して自らを抱きしめながら、体が硬直する感覚で息をする事も続けられないほどの恐怖感におびえて、絶えず周りを見渡しては闇だけは広がる絶望感に耐えていた。
ながい、ながい、夜が明けても、恭介は戻っては来なかった!!!

私はしばらくの間どうすれば恭介が戻って来てくれるのか、そればかりを考えていた。
ふと、気づいた瞬間!
やはり、恭介は何か危険なめに遭ったのだと思った!

確か、私が「お花摘みに行ってくるね!」といった時、恭介は、その前に一瞬だけ姿を見た「オコジョ」の事をとても気にして、私に話しかけていた事を思い出した。
「もう一度みたいな~」
「はじめて、見たけど!」
「本当に可愛いね~、小さな姿でも動きはすばやいね~」

確かに、そんな事を私に話しかけていた、けれど、私は、生理現象をぎりぎりまで我慢していた事で、恭介の話をしっかりと聞き受け止めてはいなかった事が、今、とても、おそろしい事に繋がってしまったのだろうか。

私は必死で自分の気持ちを落ちつかせて、この事態を誰かに伝えて、助けてほしい!
けれど、私の周りには何処までも続く、うごめく魔物のように、幾重にも折重なる山並みだけ!
そのど黒く巨大な風景が私を目指して襲い掛かってきそうなほど揺れ動いて、すざましい速さでせまり来るようで、私はもう身動き一つ出来ないほどの恐怖に震えていた。
今、だれひとり、頼れる人も無く、混乱と恐怖の中で助けを求める方法や考えさえ、思い浮かばなかった。

早朝の谷川岳山頂はどんよりと曇り風が冷たい、ただ不安と焦りが私を混乱させて、泣き喚くしか無く・・・

「私、恐ろしくて・・・」
「恭介さ~ん、恭介さ~ん!」
「早く、戻ってきて~~~」
「どこに、いるの~」
「私、どうすればいいの~」
「私ひとりを置いて行って~」
「誰も助けてくれないの~」
「怖くて、恐ろしくて、体が動かないの~」

どうしても私には、今、自分が置かれている状況が信じられなかった、何処か、獲たいの知れない魔物がなせる業に取り付かれた!!!

そんなふうに思ってみたり、又、恭介がわざと何処かに隠れているような気がして、そう思う事で、今の混乱した気持ちから逃げ出したいと泣きながら、恭介の名前を呼び続けた。
夜明けから、どの位の時間が過ぎたのだろうか、ふと、我に返った私の前に、3人の登山者が現れて、私に近づいて来た!

私は無意識の中で恭介を助けてほしいと、誰かに頼みたくて、天神平に向かって歩いていたようだった。
あまりにも私の姿が異常な表情をしていたようで、呼び止められて、やっとの思いで、昨日からの出来事を混乱した状態の中で、説明して、救援者を呼んでほしいと頼むのがやっと出た言葉だった。

今の時代と違って、携帯電話も無い、こんな時は、人間の助けが絶対必要な時代だった。
天の助けのように3人の登山者に出会い、その中の一人に天神平のロープウェイ駅まで下山して貰い、救援隊を頼んでもらう事になって、そして、他の2人の登山者と共に私は、恭介がいなくなった場所へ同行してもらい、恭介と別れてしまった時の状況を何度も何度も説明して、恭介を捜せる方法を考えられるすべてを行ったが、やはり、恭介の姿を見つけることが出来なかった。

やがて、捜索隊が着いて、私は恭介がいなくなった、今までのいきさつを何度も話し、捜索をお願いして、ひとまず、肩の避難小屋で待つように言われて、婦警さんに付き添われて小屋で待つことになったが、それから、連日の捜索が数日続いたけれど、恭介を発見する事は出来なかった。

恭介が谷川岳で行方不明なったままで、何の情報も無いままに、ひと月が過ぎた頃、私は突然、逮捕された!!!
私の逮捕容疑は、『長谷川恭介の殺人容疑』だった!!!

私は何がなんだか分からずに混乱した気持ちのまま、警察に連行された!!!

恭介が発見されたとは聞かされていなかったし、ましてや、死亡したなどとは、想像もしていない事だった。
警察につれてこられて、聞かされた事は、恭介が行方不明になった場所で、私と恭介が言い争いをして、谷川岳の山頂、トマの耳からオキの耳に向かった少し歩いた細い登山道で恭介を私がマチガ沢側の谷に突き落としたと言う、殺人容疑だった!!!

そんな恐ろしい事は、もちろん、私には全く身に覚えの無い事だし、私が恭介と言い争いをするはずも無い事だった!!!
私は警察の取調室で、思ってもいなかった事、考えもつかない事をいろいろと聞かされた、特に驚いた事は・・・

「恭介と私が言い争いをして、私が、恭介をマチガ沢の谷に突き落とすところを目撃した人間!」
「登山者がいて、目撃証言を警察に話している事だった!」

あの日、谷川岳の頂上で、恭介と私以外は誰もいなかったし、誰にも会ってはいないはずなのに・・・
私は、今まで、一度も、恭介とは言い争いも、喧嘩もした事が無かったし、もちろん、谷川岳の登山中も恭介が行方不明になった時まで、そのような言い争いをしてはいない!!!

なぜ!私がこのような事で、容疑者として取調べを受けているのかさえも、悪い夢!、長い、なが~い、苦痛と悪夢に苦しめられているのか、理解出来ないまま、連日の取り調べで混乱した状態の中で私はひと月が過ぎた頃、ひどい体調の異変に驚き、苦しんでいた。
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by hisa33712 | 2012-05-27 11:35 | 贅沢な寂しさ(小説)

カシャ、シャッター音が楽しい、古くて重いフイルム写真ですが私の宝物、記憶写真と眼の悪い私が今を映す感覚写真ですが観ていただければ嬉しいです、生きがいですから・・・


by hisa33712
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